都立一貫校(都立中等、附属中学)、九段中等の入学辞退者と繰り上げ合格者の分析
都立中等、高校附属中学、九段中等の入学辞退者の人数の分析
都立中等教育学校、都立高校附属中学の繰り上げ合格の仕組み
都立中学には繰り上げ合格という仕組みがあります。
入学辞退者が発生したとき、募集人数を満たすために行われるものです。
その仕組はこうです。
都立中学では、入学定員が決まっています。
入学定員は募集人数と同じ人数なのですが、入学者数は入学定員数と一致することが求められています。1人でも多くても少なくてもダメなのです。
そのため、都立中学の各校は、まず合格発表時には募集人数と同じ人数を合格者として発表します。
例えば、募集人数が 160人ならば、160人の合格者を発表します。
ですが、第一志望は私立中学という受験生もいますので、都立中学の合格者の中には都立中学の入学を辞退する生徒も発生します。
入学辞退者が発生したら、入学辞退した人数と同数の「繰り上げ合格者」を決めて入学手続きをしてもらう、という手続きを行うわけです。
例えば、10人の入学辞退者が発生すれば、10人の繰り上げ合格者を決めます。
そのため、繰り上げ合格の連絡は入学手続きを締め切ってから行われるのです。
実際の繰り上げ合格に関する手続きについては「都立中等教育学校、高校附属中学、千代田区立九段中等教育学校の願書配布日程について」に時系列で詳細に解説していますので、あわせて確認してください。
つまり、繰り上げ合格となる人数は、入学辞退者と同数となるわけですが、入学辞退者数は学校ごとに特徴があり、毎年ほぼ同じ傾向となっています。
この記事では、2018年、2019年、2020年の入学辞退者数を確認し、都立中学各校の入学辞退者数の傾向を考察しています。
「都立中学」とは都立中等教育学校と都立高校附属中学、九段中等教育学校
なお、この記事で言う「都立中学」とは、下記の 11校をまとめて「都立中学」と表現しています。
都立中等教育学校
小石川中等
桜修館中等
三鷹中等
立川国際中等
南多摩中等
都立高校附属中学
両国高校附属中学
白鷗高校附属中学
富士高校附属中学
大泉高校附属中学
武蔵高校附属中学
千代田区立九段中等教育学校
ただし、詳細は後述しますが、千代田区立九段中等教育学校は入学辞退者数を公表していませんので、全体集計に置いては都立中等教育学校、および、都立高校附属中学の 10校の人数を集計したものとなっています。
都立中学全体での入学辞退者数と小石川中等を除いた入学辞退者数
九段中等を除く、都立中学 10校を合計した入学辞退者数は、以下の通りとなります。
男 女 計 男子率 女子率 全体率
2020年 39 51 90 05.64% 07.41% 06.52%
2019年 44 38 82 06.37% 05.49% 05.93%
2018年 44 44 88 06.39% 06.35% 06.37%
募集人数は、特別枠がある学校(小石川中等、両国中学)がある関係で年ごとに少しずつ異なりますが、2020年 1380名、2019年 1383名、2018年 1382名となっています。
そして、都立中学全体の入学辞退率としては、6.0~ 6.5%となっています。
しかし、2020年では小石川中等だけで 28名の辞退者を出しており、10校全体の辞退者 90名のうちの 31%(女子にいたっては 39.2%)を占めていますので、これを全体の人数としてみると見誤ります。
そのため、小石川中等の辞退者数を除いた 9校の辞退者数のみにしたものが下記となります。
男 女 計 男子率 女子率 全体率
2020年 31 31 62 05.07% 05.07% 05.07%
2019年 31 30 61 05.07% 04.89% 04.98%
2018年 29 34 63 04.75% 05.55% 05.15%
小石川中等を除くと、毎年ほぼ 61~63名(約 5%)の安定した人数であることが分かります。
つまり、中等教育学校の 160名募集の学校で 8名、高校附属中学の 120名募集で 6名が平均的な辞退者数ということになります。
小石川中等以外の学校の場合、繰り上げ合格の順番が 5番以内なら安全圏、2桁になると厳しい...ということになります。(学校ごとに異なりますが。)
ちなみに、正規の合格者は男女別々に合格者を決定しますが、九段中等以外の都立中学の繰り上げ合格は、男女を分けずに成績順位繰り上げ合格者を決めていきます。
そのため、繰り上げ合格を考える際に辞退者数を見る場合は、男女別々の人数ではなく、男女合計の人数が意味を持ちます。
九段中等は、男女別々に繰り上げ合格者を決めているようです。
九段中等の繰り上げ合格者を決める過程は公表されていませんが、公開されている千代田区教育委員会の議事録から男女別々に繰り上げ合格者を決めていることが確認できています。
小石川中等の入学辞退者数の分析
小石川中等の入学辞退者数は下記のとおりとなっています。
男 女 計 男子率 女子率 全体率
2020年 08 20 28 10.00% 25.97% 17.83%
2019年 13 08 21 16.25% 10.13% 13.21%
2018年 15 10 25 19.23% 12.50% 15.82%
小石川は特別枠があるため、年によって募集名数が異なります。
(2020年 157名、2019年 159名、2018年 158名)
小石川中等教育学校は、毎年 15%前後の入学辞退者を出しており、2020年の女子においては 25.97%と 4分の 1を超える大量の辞退者が出ています。
理由は明確で、小石川中等は都立中学の中で最も偏差値が高いため、トップレベルの私立中学の併願先として受験する生徒が多いためです。
そして、志望校の私立中学に合格したら私立の方を選択する受験生が多いためです。
ただ、男女合計すると 15%前後ではありますが、男女ともに人数の増減が激しく、辞退者数を予測することは難しいと言えます。
桜修館中等の入学辞退者数の分析
桜修館中等の入学辞退者数は下記のとおりとなっています。
男 女 計 男子率 女子率 全体率
2020年 07 04 11 08.75% 05.00% 06.88%
2019年 09 09 18 11.25% 11.25% 11.25%
2018年 04 11 15 05.00% 13.75% 09.38%
募集人数は、男女各 80名ずつの合計 160名です。
桜修館中等は、小石川中等に次いで辞退者が多い学校です。(とはいえ、小石川中等の約半分ですが。)
理由は、近年の人気とともに偏差値も上がってきていることや、最寄り駅がある東急東横線沿線には私立中学も多いことから、小石川中等のように私立との併願先に選ばれているのであろうと思われます。
2020年の辞退者は減少していますが、これが一時的なものであるならば、だいたい募集人数の 10%となる 15名前後は繰り上げ合格が期待できることになります。
三鷹中等の入学辞退者数の分析
三鷹中等の入学辞退者数は下記のとおりとなっています。
男 女 計 男子率 女子率 全体率
2020年 03 06 09 03.75% 07.50% 05.63%
2019年 03 03 06 03.75% 03.75% 03.75%
2018年 04 03 07 05.00% 03.75% 04.38%
募集人数は、男女各 80名ずつの合計 160名です。
2020年の辞退者はやや増えているものの、辞退者は多くない学校です。
立川国際中等の入学辞退者数の分析
立川国際中等の入学辞退者数は下記のとおりとなっています。
男 女 計 男子率 女子率 全体率
2020年 03 02 05 04.62% 03.08% 03.85%
2019年 01 02 03 01.54% 03.08% 02.31%
2018年 01 01 02 01.54% 01.54% 01.54%
募集人数は、男女各 65名ずつの合計 130名です。
立川国際中等は、帰国子女、および、外国籍枠がありますので、一般募集の枠が 130名となっています。
立川国際中等は、一般募集の枠が他の中等教育学校よりも少ないために、辞退者率が高めに出てしまいますが、辞退者数で見ると人数は少なく、繰り上げ合格は望みにくい事が分かります。
理由は、南多摩中等と同じく私立中学が多くないエリアであるためと思われます。
南多摩中等の入学辞退者数の分析
南多摩中等の入学辞退者数は下記のとおりとなっています。
男 女 計 男子率 女子率 全体率
2020年 02 01 03 02.50% 01.25% 01.88%
2019年 01 01 02 01.25% 01.25% 01.25%
2018年 01 03 04 01.25% 03.75% 02.50%
募集人数は、男女各 80名ずつの合計 160名です。
南多摩中等の辞退者数は毎年非常に少なく、繰り上げ合格はほぼ望めない事が分かります。
理由は多摩地区には私立中学が多くないためと思われます。
そのため、南多摩中等を第一志望として受験する受験生が多いと思われ、合格した受験生はほぼ辞退せずに入学をするものと考えられます。
両国中学の入学辞退者数の分析
両国中学の入学辞退者数は下記のとおりとなっています。
男 女 計 男子率 女子率 全体率
2020年 03 02 05 05.00% 03.33% 04.17%
2019年 01 04 05 01.67% 06.67% 04.17%
2018年 05 02 07 08.33% 03.33% 05.83%
募集人数は、男女各 60名ずつの合計 120名です。
ほぼ平均的な辞退者数の学校です。
また、辞退者の人数の変化が小さく、繰り上げ合格者の人数を読みやすい学校です。
白鷗中学の入学辞退者数の分析
白鷗中学の入学辞退者数は下記のとおりとなっています。
男 女 計 男子率 女子率 全体率
2020年 03 05 08 04.48% 07.58% 06.02%
2019年 03 04 07 04.55% 05.88% 05.22%
2018年 06 03 09 09.09% 04.41% 06.72%
白鷗は特別枠があるため、年によって募集人数が異なります。
(2020年 133名、2019年 134名、2018年 134名)
平均よりはやや辞退者が多い学校です。
また、辞退者の人数の変化が小さく、繰り上げ合格者の人数を読みやすい学校です。
富士中学の入学辞退者数の分析
富士中学の入学辞退者数は下記のとおりとなっています。
男 女 計 男子率 女子率 全体率
2020年 00 01 01 00.00% 01.67% 00.83%
2019年 02 01 03 03.33% 01.67% 02.50%
2018年 04 03 07 06.67% 05.00% 05.83%
募集人数は、男女各 60名ずつの合計 120名です。
富士中学は 2018年の辞退者は全体の平均的な人数ですが、それがやや多く見えるくらい辞退者数が少ない学校です。
理由は、都立中学の中で偏差値としてのランクが一番低いと見られていることであろうと思われます。
そのため、私立は併願せずなんとしても都立中学に入りたい、と思う受験生が富士中学を第一志望として目指すためであろうと思われます。
また、2020年の辞退者は女子の 1名のみという状態で、ほぼ繰り上げ合格は望めないことが分かります。
大泉中学の入学辞退者数の分析
大泉中学の入学辞退者数は下記のとおりとなっています。
男 女 計 男子率 女子率 全体率
2020年 04 05 09 06.67% 08.33% 07.50%
2019年 06 04 10 10.00% 06.67% 08.33%
2018年 01 02 03 01.67% 03.33% 02.50%
募集人数は、男女各 60名ずつの合計 120名です。
辞退者は、2018年は少なかったのですが、2019年、2020年は平均より多くなっています。
武蔵中学の入学辞退者数の分析
武蔵中学の入学辞退者数は下記のとおりとなっています。
男 女 計 男子率 女子率 全体率
2020年 06 05 11 10.00% 08.33% 09.17%
2019年 05 02 07 08.33% 03.33% 05.83%
2018年 03 06 09 05.00% 10.00% 07.50%
募集人数は、男女各 60名ずつの合計 120名です。
辞退者はやや多い印象がしますが、都立一貫校の中での「都立三校」と言われる、小石川、両国と並ぶ三校のうちの一校として上げられる学校であることを考えると、やや落ち着いた人数であるように感じます。
私立中学との併願先として選ばれる学校でありつつも、都心からやや離れていることが理由で、第一志望の学校として選択している受験生も多いのであろうと思われます。
九段中等の入学辞退者数の分析
九段中等の入学辞退人数、辞退率は不明です。
九段中等教育学校は、千代田区立の学校であるため、他の都立中学とは違い入学辞退者数のアナウンスはありません。
そのため、正確な人数を知るすべはありませんが、比較的高い割合で入学辞退者が出ていると言われています。
その人数、10~15名程度(約 10%弱)。
辞退者が多い理由として、千代田区立在住者枠(A区分)があるためであろうと考えられます。
千代田区内には有名な私立中学が多く、また、私立への進学率が高い区でもあります(30~35%で、23区中 6~8位程度)。
千代田区在住の受験生は確実な滑り止めとして、九段中等を選択するため、A区分の合格者の中から相応の辞退者があるのではないか、と考えられます。
正規合格者は、A区分、B区分で分かれていますが、繰り上げ合格者は A区分、B区分は関係なく、成績上位者から繰り上げ合格者を決めているのではないか、と考えています。
そう判断する理由については「都立中等教育学校、高校附属中学、九段中等の繰り上げ合格の発表の仕組みと手順」」に詳しく書いていますので、こちらを確認してください。
都立中学の入学辞退者数の分析のまとめ
都立中学の入学辞退者数を見ると、ハッキリとした傾向があることが分かります。
まず、学校がある場所による傾向。
23区内にある学校の入学辞退者数は多く、多摩地区(23区以外の地域)にある学校の辞退者は少ない、ということです。
次に、学校の偏差値としてのランクによる傾向。
偏差値的に上位に来る小石川中等、桜修館中等、武蔵中学の辞退者は多く、下位に来る富士中学の辞退者は少ない、ということです。
これはあくまでも都立中学全体を見て俯瞰して分析した結果です。
全体的な傾向はつかめますが、あくまでも全体的な分析の結果です。
我が子にいざ「繰り上げ合格候補通知」が届いたとき、繰り上げ合格が叶うのか、否か、は全く分かりません。
学校ごとに傾向はありますが、「今年」「受験した学校」で何人の辞退者が出るかは入学手続きが締め切られないと分からないためです。
その意味では、この分析は意味がないとも言えますが....
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