「『学力』の経済学」に記載してあるエビデンスに基づく子育てのヒント
2021/01/16
「『学力』の経済学」は「教育にエビデンスを」と書いてある
「『学力』の経済学」は日本の教育行政の問題点を指摘している
「『学力』の経済学」という本があります。
この本は、「日本の教育行政にはエビデンス(科学的な根拠)が欠如している」ため、「教育にエビデンスを」ということを伝えるために書かれた書籍です。
書籍の最初の方は、子育てにはどのような考えを持って臨めばいいか、ということに役立つ内容も多いのですが、徐々に教育全体の問題点の指摘になっていき、日本の教育行政にはエビデンスに基づいて判断するという仕組みが欠如しているため、エビデンスに基づく教育行政が必要、と言うことを訴える内容に変わっていきます。
そのため、子育て中の親が読む教育の本としてはやや方向性の違いの雰囲気を感じますが、例えば、「勉強をさせるためにモノで釣っていいのか?」といった問題に対してエビデンス(科学的な根拠)に基づいて結論が書いてありますので、子育て中のお父さん、お母さん方にはぜひとも一読してほしいと思う書籍でした。
教育ではなぜ個人の経験をありがたがるのか
引用の引用になりますが、書籍内でこのように書かれています。
-----------(引用開始)
ベストセラーとなった『統計学が最強の学問である』の著者である西内啓氏は、同著の冒頭で次のように述べています。
「不思議なもので、教育という分野に関しては、まったくといっていいほどの素人でも自分の意見を述べたがるという現象がしばしばおこる」
(中略)
「どのような教育がいいか、という問いへの回答は、教育される本人の特性や能力、環境などさまざまな要因に左右される……(中略)自分が病気になったときに、まず長生きしているだけの老人に長寿の秘訣を聞きに行く人はいないのに、子どもの成績に悩む親が、子どもを全員東大に入れた老婆の体験記を買う、という現象が起こるのは奇妙な事態だと思わないのだろうか」
(中略)
「子育てに成功したお母さんの話を聞きたい」という欲求自体に問題があるわけではありません。しかし、どこかの誰かが子育てに成功したからといって、同じことをしたら自分の子どもも同じように成功するという保証は、どこにもありません。西内氏が指摘するとおり、子どもの成功にはあまりにも多くの要因が影響しているからです。
-----------(引用終了)
「的確なたとえに感銘すら受けました」と書いてありますが、私も同じようにすごく的確なたとえだと感じます。
教育に関しては個々人の経験や想いによって語られ、実践されることが多く、根拠がある理論が希薄な場合が多々あります。
そのため、「『学力』の経済学」を読むと、教育にもエビデンス(科学的根拠)が重要だということを改めて認識させられます。
エビデンスに基づく教育方法の紹介
この記事では、「『学力』の経済学」に記載してある内容を元にして、「子育てにおける具体的なエビデンスに基づく子育ての方法」について紹介していきます。
ただし、この記事では結論のみを書いていますので、なぜそうなのか、という理由や根拠などを知りたい方は書籍を読んでいただければ、と思います。
「『学力』の経済学」に記載してあるエビデンスに基づく教育方法
お小遣いやご褒美などで釣ってでも勉強させる方がいい
お小遣いやご褒美などで釣ってでも勉強させる方がいい
その時、「学校の成績が上がったらお小遣いを上げる」というアウトプット(結果)に対してお小遣いを出すのではなく、「本を読んだら」「問題集を解いたら」といったインプット(行為)に対してお小遣いを出す方がいい
アウトプットにご褒美を出すなら、成績アップにつながるインプットの方法や勉強方法を指導する人を付けてあげる必要がある
小学生まではものでも効果があるが、中高生以上になるとお金が効果的である
褒めて育てても自尊心の向上にはつながらない
褒めて育てても自尊心の向上にはつながらない
逆に、成績などがアップすれば自尊心が向上する
成績の悪い子をむやみやたらに誉めると実力が伴わないナルシストに育つ可能性が高くなる
子どものもともとの能力を誉めると意欲を失い成績が下がる
誉めるときは具体的に達成した内容、行為をあげて褒めることが重要である
テレビやゲームを止めさせても勉強の時間は増えない
テレビやゲームを止めさせても勉強の時間は増えない
テレビやゲームがもたらす負の因果効果は私たちが考えているよりも大きくない
(暴力的なテレビ番組やゲームを見たからといって暴力的になるようなことはない)
勉強は同性の親が関わる方がいい
勉強には男の子なら父親が、女の子なら母親がかかわる方がいい
同様に学校の先生も同性の方がプラスの影響が高い
共働きで自分が直接関われないなら、親兄弟、塾や家庭教師の先生などでもいい
優秀な同級生はプラスの効果がある
優秀な同級生はプラスの影響があるが、レベルが高すぎるとマイナスの影響がある
問題児がいると学級全体が負の因果効果がある
同じような学力の集団を作る習熟度別学級は全体の学力向上の効果がある
この効果は学力が低いグループほど顕著になる
ただし、対象とする年齢が低いときは格差が拡大し、平均的な学力は下がってしまう
子どもや若者の反社会的な行為は友人からの影響を受けやすい
負の影響を受けないようにするためには引越しは有効な手段である
子どもへの人的投資は小さいときから始める方が効果的
子どもへの人的資本への投資は小さいときから始める方が良く、小学校に入学する前の就学前教育(幼児教育)がもっとも効率が高い
「人的資本への投資」とは、勉強だけに限るものではなく、運動や健康、しつけなども含まれる
注意点としては、就学前教育を行っても、IQ(認知能力)の差は 8歳前後でなくなる
しかし、非認知能力の差は長期にわたってプラスの影響を残し続ける
非認知能力の重要な力としては「自制心」「やり抜く力」
非認知能力は小さい頃からの教育によって鍛えられるものだが、成人しても鍛え続けることが出来るものが多いため、いつ始めても遅いことはない
(認知能力は成人してから伸ばすのはなかなか難しい)
少人数学級は効果があるが費用対効果は悪い
少人数学級は効果はあるものの、20人以下にならないと効果は見え始めない
少人数学級は効果があるとは言え、それにかかる費用に対する効果は非常に悪い
費用対効果が高い対策は、教育の重要性に関する情報を親に提供することである
学校が学力に与える影響は限定的である
学校が学力に与える影響は限定的である
学力に与える影響は、学校の資源(学校教育)と家庭の資源(家庭での教育、塾など)がある
それぞれ半分ずつ程度で、家庭の資源によっての影響もかなりの大きさを占める(学校の資源では出来る範囲が限られる)
また、学力の 35%程度は遺伝によって影響を受けている
つまり、「どこの学校に通うか」と言うことと同じくらい、「どういう親の元に生まれ、育てられたか」と言うことも学力に与える影響が大きい
高い質を持つ教員から教育を受けると高い学力が身につく
高い質を持つ教員から教育を受けると高い学力が身につく
教員の質を数値で示すことが出来る「付加価値」と言う情報がある
これは、その教員に教わることで成績が伸びたことを示す値
アメリカではこの教員の「付加価値」を誰でも確認することが出来る
教員の免許制度によって教員の質を担保することは出来ない
教員免許の有無による質の差は小さい(塾の講師や家庭教師など、教員免許を持っていない教員は多くいる)
しかし、免許を持っている教員の中での質の差は大きい
エビデンスに基づく教育方法の重要性
本書内にも書いてありましたが、子どもの能力は遺伝的要素も強いわけです。
そのため、東大に行くような子どもの場合はそもそも頭がいい可能性があり、もしかすると親は何もしなくても東大に行った可能性もあるわけです。
そのため、成功した人の話を聞くことは悪いことではないと思いますが、それをそのまますべて取り入れるのではなく、自分の子どもに役に立ちそうなものを取捨選択して、子どもに合うようにカスタマイズをして実践してみるといいのであろうと思います。
また、教育に関連する本はたくさんありますが、著者自身が考えたこと、気づいたこと、経験したことに基づいて書かれたものではなく、少しでもエビデンス(科学的根拠)が示されているものを採り入れていくといいのではないか、と思います。
個別具体的な勉強方法については、上記の書籍はエビデンスに基づいたないようになっていますので、読んでみる価値があるのではないかと思います。
ちなみに、試験対策のための勉強方法といった内容ではなく、人生において必要な知識やスキルをすぐに使えるように鍛えるための勉強方法、と言った内容のものですので、社会人にこそ必要な勉強方法、脳の鍛え方なのかな、とも思います。
教育と企業経営の話は似たところがある
ちなみに、「成功体験を聞く」と言うことに関しては、企業経営でも似たようなことを思うことが多々あります。
教育と同じ様に企業経営は多種多様のため、明確な「正解」はありません。
そのため、数多くの企業経営の書籍が売られ、多くの経営者が経営論を語っています。
しかし、置かれている状況は個々で異なりますので、成功体験を聞いてそれを同じように実践しても同じように自分も成功できるとは限りません。
しかし、これをやると絶対失敗する、失敗の確率がぐんと上がる、というものは存在するため、どちらかというと企業経営においては失敗談をいろいろ聞く方が役に立つのではないか、とは思います。
失敗談を聞いて、「いやいや、そんなことはしないだろ?」と思うようなことも多々あるわけですが、それをやってしまっていることもあるから不思議ですね。
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